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好きだと言って抱きしめて

愛することを知らないオレは


愛される資格なんてない




午前零時過ぎ、書き直した書類を届けに行くと、神が机に突っ伏して居眠りしていた。
「人に仕事押し付けておいて、自分は居眠りか…」
なんとなく腹が立ったので頭を叩いてみたが、微動だにしなかった。
頬をつねってみたり、耳元で叫んでみたりといろいろ試したが、一向に起きる気配がない。
「……めんどくさい。」
数十分粘ったが起きそうにないので、諦めてそのまま寝かせておくことにした。
「つーか、よくメガネかけたまま寝れるな…」
することもないので、神のメガネを外して机の上に置き、寝顔を眺めることにした。
「いつも、このくらい静かだといいのにな…」
ハニーブラウンの髪を指ですきながら、琥珀色の瞳を思い浮かべる。
「…やっぱり、違うんだよな。」
黒色の髪と紫色の瞳は、神と自分が違う存在であることを物語っていた。
「同じ魂から生まれたはずなのに、どうしてここまで違うんだろうな。」
創造神から切り離された自分は正反対である破壊の力を持っていた。
その力のせいで人に関わることができず、永い年月を一人で過ごしてきた。だから愛することを知らず、愛されるということも知らなかった。
「そんなオレを救ってくれたのは、お前なのにな…」
一人だったオレに愛するということを教えてくれたのは神だった。
それなのに神はオレの力を恐れ、オレという存在を愛してはくれなかった。
愛したいと思えば思うほど、愛そうとすればするほど、距離ができていった。
意識はしてない。
無意識のうちにそうなった。
所詮は創造神と破壊神。
馴れ合うことなどできはしない。
そう割りきれればよかった。
でも、割りきれなかった。
神と過ごす内にオレは感情を持ったから。
離れたくないと思った。
神を愛したいと、神に愛されたいと思ったから。
「お前は、オレを――」

―愛してくれているのか?

答えが返ってこないことは分かっていた。
分かっていたのに悲しくなって涙が溢れた。
「世界と…」
それ以上は言えなかった。
喉まで出かけた言葉を飲み込んでただ静かに泣き続けた。
これ以上は意味がない。
声に出しても届かない。
たとえ届いたとしても、なんの意味もないのだから


愛することを知ったのに

愛されたいと思う人から

愛されることは許されない



一番じゃなくてもいい

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09.02.04

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